インプレイスレンダリング2

2017年08月22日

前回の記事はこちら

「トラックをレンダリング」ダイアログのその他の項目

まず、「トラックをレンダリング」の画面の中で前回説明できていなかった残りの部分を見ていきます。
EX8-1

・単一のトラックにミックスダウン
これはその名の通り選んだリージョンや選択範囲を1トラックにミックスダウンするオプションです。この場合「ドライ」は選べません。

・テールサイズ
これは選んだリージョンや選択範囲から設定した長さだけ余分に長い範囲をレンダリングするオプションです。リバーブやディレイなどが多く含まれている素材をレンダリングする際、リージョンや選択範囲が終了しても音はまだ鳴っています。そこを調整するためのものです。通常は1小節くらいで十分かと思います。

・その他の項目
書き出し時のビットレート、名前、保存先などを選びます。ここはお好きな設定で。保存先は「現在のプロジェクトフォルダ」が良いでしょう。ビットレートに関して、詳しくはこちら

トラックのチャンネル属性

ダイアログの説明は以上ですが、大事なのはここからです。まず、チャンネル属性の扱いについて。これは、トラックが「モノラル」か「ステレオ」かという問題です(cubase proにはサラウンドもありますが今回は扱いません)。cubaseでは、モノラルとステレオでは扱いが若干異なります。

まず、モノラルトラックはトラック上に1チャンネル分のオーディオがある状態です。少しわかりにくいですが、この場合、プロジェクトウィンドウ上に(ミキサー上にも)、トラックがモノラルであることを示す1つの◯がつきます。

EX8-2 モノラルトラック

それに対し、ステレオトラックは、モノラルが2本集まりそれぞれがLRに配置された状態です。この場合は◯は2つになりステレオトラックであることが分かります。

EX8-3 ステレオトラック

モノラル・ステレオの違いは普段あまり意識なく使っている方が多いかもしれませんが、wavesのプラグインなどはモノラル用とステレオ用が存在し、見た目も違います。負荷的にもステレオはモノラル2つ分を処理しているので、少し重いはずです。

EX8-4 wavesのモノラル/ステレオプラグインの違い

例えば、もともとモノラルのトラックを、単純にステレオ化して書き出すのはあまり意味がありません。LRに全く同じデータが配置され、結局はモノラルで鳴ることになります。でもエフェクトは2チャンネル分必要なので、負荷は増大します。

いろいろ書きましたが、要はレンダリングする時にはチャンネル属性を合わせてあげましょう、ということです。ちなみにVSTインストゥルメントにもモノラルとステレオが存在し、例えばaddictive drumsは、オーバーヘッドマイクやルームマイクのバスはステレオ、各パーツのマイクのバスはモノラルです。実際のドラムレコーディングに近い状態が再現できます。下図EX8-5のようにバスを増やすことができます。

EX8-5 addictive drumsにはモノラルバスとステレオバスが存在する

では、レンダリングの設定はどのようにすれば良いか?ダイアログで「ドライ」か「チャンネル設定」を選べば良いだけです。例えばaddictive drumsの場合、この設定でレンダリングすると、各トラックのバス属性に合わせて書き出されます。

EX8-6 「ドライ」か「チャンネル設定」で、各バスのチャンネル属性に合わせてレンダリングされる




複数バスを持つVSTインストゥルメントの書き出し

少しマニアックな設定です。上のaddictive drumsのように、複数バス(トラック)を持つVSTインストゥルメントは多く存在します。バスの数は、それぞれのプラグインによって異なります。たとえばcubase標準のhalion sonic SEの場合、16マルチティンバーとなっており、アウトプットバスも16つあります。halion sonic SE1つで、16人の演奏者がいるようなものです。

この場合、MIDIチャンネル1チャンネル目はインストゥルメントトラックを使って普通に打ち込みますが、MIDIチャンネル2チャンネル目以降はMIDIトラックを作り、そのアウトップットをhalion sonic SEにアサインするのが一般的だと思います。このとき、インスペクタでMIDIチャンネルの設定をすると、halion sonic SE上で任意の楽器を鳴らせるわけです。

EX8-7 マルチティンバーのVSTインストゥルメントの打ち込み

このようにして打ち込んだ場合、複数トラックのリージョンを選んでレンダリングすると、1つ問題が起きます。そのインストゥルメントのバス数×トラックの数だけ、レンダリングが起こるのです。例えば3トラックの打ち込みを3パラアウトしたhalion sonic SEの音源でレンダリングする場合、9トラックのファイルが出来上がりますが、そのうち6トラックは空白の無駄なファイルとなってしまいます。

EX8-8 レンダリングの問題点

この問題は、1つのインストゥルメントで使用されているすべてのMIDIデータを1トラックにまとめると解決します。以下の設定が必要です。
①まとめたいインストゥルメント/MIDIトラックをソロにし、曲の最初から最後までをロケーターで囲む(ショートカットは「ctrl+A(macは⌘+A)」→「P」)。

EX8-9

②適当な空のMIDIトラックを用意し選択した状態で(このトラックもソロにしておくと良い)、「MIDI>左右ロケーター間のMIDIをマージ」を実行。ダイアログのチェックボックスをすべて外し、「OK」をクリックすると、そのMIDIトラックに、MIDIデータがまとまった状態でコピーされます。

EX8-10 「左右ロケーター間のMIDIをマージ」実行後

③出来たMIDIリージョンを、インストゥルメントトラックに移動します。古いMIDIデータは削除しても大丈夫です。そして、そのインストゥルメントトラックのインスペクタで、送信MIDIチャンネルの設定を「すべて」にします。

EX8-11 送信MIDIチャンネルの設定を「すべて」に

これでこのMIDIリージョンのみを選択し、レンダリングを行うと、無駄ファイルを作ることなくレンダリングされます。

EX8-12 無駄なくレンダリング成功

MIDIデータは、個別のチャンネルを持っています。1つのリージョンにまとまっていても(この状態は「フォーマット0の状態です)、「マージ」することで中のチャンネルは別々になっており、楽器の鳴らし分けが可能です。キーエディタを開くと分かると思います(下図EX8-13はMIDIチャンネルで色分けしており、1つのリージョンの中に複数のMIDIチャンネルを持ったデータが混在していることが分かります)。キーエディタの中で設定されたMIDIチャンネルは、EX8-11のようにトラックのインスペクタで送信MIDIチャンネルの設定を「すべて」にすることで生きてきます(例えばインスペクタでチャンネル1に設定されている場合は、キーエディタの中のMIDIチャンネルは無視され、すべて1で送信されてしまします)。

EX8-13 1トラック内に複数のMIDIチャンネルのデータが混在可能

この1つにまとまったMIDIデータは、「MIDI>パートを分解」より、再度分解できます。ダイアログで「チャンネルを分割」を選択し、「レーンに分解」にチェックを入れて実行すると、1つのインストゥルメントトラック内での処理も可能です(分解されていても、あくまで1トラック内にまとまっているので、レンダリング時は無駄ファイルを作成しないですみます)。
EX8-14 パートをレーンに分解

最近は、MIDIチャンネル毎にトラックを作るのではなく、最初からレーン表示で打ち込むのも良いかな、と筆者は考えています。

今回は以上になります。


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